音楽のちから:本当に心(臓)を開くもの

白衣と聴診器がなければ、バルティモアにある
メリーランドメディカルセンター大学のホールをうろつくマイク・ミラー博士を、
きっとあなたは中年のロックミュージシャンだと思っただろう。

ミラーは、リサーチ心臓専門医として、
ここ何年も幸福、または人を幸せにするものが心臓に与える影響を研究してきた。
まず最初の研究題材として笑いを取り上げ、
おかしい映画を見て笑うことで実際に血管が開き、
血液がより自在に流れることをみつけた。
ミラー氏は「笑いに可能なら、音楽ではどうだろうか?」と思い至り、
心臓血管に与える音楽の影響を調べた。
「わかったのは、音楽はおそらく最もストレスを乗り除くものだということです。
演奏することでも、また音楽を聞くだけでも…。」

方法としては笑いの研究と基本的に同じかたちをとった。
ハイテクのイメージングを使ってミラーは、
人が音楽を聞いているときの血管のサイズを測った。
その結果はミラーには明らかだった。
「血管の内側のラインはゆるみ、開き、心臓を守る化学物質を生産しました。」

しかし、被験者が特に楽しいと感じない音楽を聞かされたときはというと…?
「血管は実際のところ閉じ始めました。」とミラーは語った。

それはまさに緊張、またはストレスのしわざだ。
長期にわたるストレスは心臓血管系に大混乱をもたらすことがあり、
やがて、血管が硬く、こわばり、血液の流れを細くしてしまう。
歳をとるにつれ、 動脈硬化という問題が起こり、収縮した血管によって血圧が上がり、
心臓発作やストロークの危険性が増す。
ストレスはまた、免疫系を抑圧し、不妊や 性的不能の原因となり、
老化プロセスを早め、ときには脳に障害を起こすため、
人はより不安や抑圧に耐えられなくなる。
だが、音楽はストレスの影響に立ち向かうことができる。
「音楽はいいこと、健康、ある種の陶酔の感覚を与えてくれます。」
とミラー氏は語る。

スタンフォード大学の最近の研究では、うつ病と診断された高齢の患者たちは、
ミュージックセラピストが訪問すると、自己尊厳を取り戻し、気分の向上が見受けられた。
実際、国内の多くの病院が患者を癒やすために、ミュージックセラピーを導入している。
ミネソタ州、ロチェスターのメイヨークリニックでは、
「リラクゼーションを促し、緊張、ストレス、不安を軽減するために」
心臓血管治療の一部に音楽を採用している。
「音楽は患者さんがリラックスするのをサポートするので、
特に回復期において、痛みが減り、気分も上がり、よりよく眠れるようになります。」
と言うミラー氏は、同様の結果を音楽療法を受ける患者たちにみつけてきたばかりではなく、音楽のリラックス効果が実際、若返りにもいいと信じている。
「音楽が老化プロセス のスピードを落とすと信じたいですね。」

でも、音楽を聞くときは気をつけて。ビヨンセかB52だろうが、
はたまた、ショパンか、ジョニー・キャッシュが好きだろうが、
同じ曲を何回も繰り返して聞くと、音楽の体への影響は減るとミラー氏。
「同じ曲を何回も何回も聞けば、気分は高まりません。時々音楽を変えてみてください。
フレッシュなきもちで音楽を聞けば、喜びが戻ってきて、体もオープンになります。」

というわけで、今度、あなたがボスにいらいらしたり、子供に頭に来たり、
車が壊れたりしたときは、髪の毛を引っこ抜かないで。代わりに、ラジオをつけるか、
iPodを取り出すか、CDをかけて、音楽にわれを忘れてみてはいかが…。

引用元 CNN

トルコのお医者様、イスラム音楽の演奏で癒やす…

麻酔科医のエロール・カン博士(左)がYayli tanbur(オットマン・バイオリ ン)を演奏中。Bingur Sönmez教授が手にしているのはネイフ ルート。血管手術を受けたばかりの患者さんが、演奏に合わせて口ずさみ、リ ラックスしている。

麻酔科医のエロール・カン博士(左)がYayli tanbur(オットマン・バイオリン)を演奏中。Bingur Sönmez教授が手にしているのはネイフルート。血管手術を受けたばかりの患者さんが、演奏に合わせて口ずさみ、リラックスしている。

(画像:www.theguardian.com)

トルコの首都イスタンブールにあるメモリアルホスピタルでは、
医師のグループが様々な病気の補完的な治療にイスラムの伝統音楽を復活させています。薬が科学やテクノロジーにますます依存しているこの時代に、音楽のセラピーは変わったことと思うかもしれませんが、音楽による治療の恩恵は、ほぼ1,000年にわたって知られていることです。
伝統的アラブ及びトルコの音楽に特有の「マカム」という様式は、9世紀にはイスラムの治療薬として利用されていました。当時、al-Farabiという哲学者が様々な音楽様式が人のからだと心に与える影響について分類しました。
音楽のピッチ、パターン、展開について定義されたマカムは、耳から聞いて習う ものでした。

イスタンブールのメモリアルホスピタルの医師たちは、それぞれ異なったマカムが
患者たちにポジティブな心理的、理学的効果をもたらすことを確信しています。

集中治療病棟の麻酔医であるエロール・カン博士はブルガリア、ソフィアの病院 に勤務していたときミュージックセラピーに出会いました。当時はテープレコーダーとヘッドフォン を使っていましたが、1996年にトルコに移住すると、博士は何百年も昔のミュージックセラピーの音楽 を演奏するためにネイフルート(トルコ式フルート)を学びました。そして、生の楽器で演奏する と影響はさらに大きくなることに気づいたのです。今では他の2人の同僚とともに、yayli tan bur(オットマン・バイオリン)やギターといった伝統楽器をマスターするようになりました。
「病気や健康の問題によって異なるマカムがあります。マカムの中には気持ちを 高揚させるものもあれば、リラックスさせるものもあります。食欲不振に悩む患者さんに効くマカムがあれば、hicazというダイエットが 必要な人向けのマカムもあります。もし、hicazを店内で演奏するレストランがあれば、お店はすぐつぶれてしまいますよ!」

「中世の病院は噴水のある中庭の周りに建てられていました。水の音、ガラス窓 の色、照明の具合、花や植物…そのすべてが患者たちにとって補完的な治療だったのです。だから、私たちの集中治療病棟でもこころが和 むピンク色の照明を採用することにしました。私たちの職場ではすでに5年間マカムを治療に使っていますが、最近ではほかの医師たちが 相談にくるようになりました。小児病棟の先生に今、ネイを教えているところです。それに時々、休んでいる同僚の先生のために演奏する こともあります。そうして、お互いにケアしているんですよ。」

医師たちが明確にしたいのは、マカムは現代医学の代わりとして使われているの ではなく、補完セラピーとして
利用されているということです。10分間の生演奏のあと、患者の心拍数と血圧は 下がり、追加して投薬する必要がないそうです。

参照元:www.theguardian.com