回復のための建築：設計は健康にいい影響を与えられるか？

誰も建築が癌を直すことができるとは思わない。それはヘルスケアチームの領域だ。だが、最近、「エビデンスベース（科学的根拠のある）設計」と呼 ばれるリサーチが頻繁に行われている。「エビデンスベース医療」と同様に、「エビデンスベース設計」は出来る限り最上の結果を引き出す物理的ス ペースを創造するためにリサーチとデータに重きを置いている。癌治療の領域においては、これは人々が最高のクォリティの治療を受けられるだけではなく、癒される環境を設計することだ。

ニューヨークインテリアデザイン校の校長のエレン・フィッシャー博士はこのように語る。「エビデンスベースの原則に基づいて設計した環境におい て、患者さんは経験が向上し、より早く、よりよく治ることができるようになります。例えば、病室の家族が集うスペースを居心地よくしたり、部屋の 洗面台、照明の調整、室温、そして空調…すべてがヒーリングとなります。物理的な環境の設計はまた、より効率のいい生産的なワーキングエリアやよ りよいサポートができる病室をつくることや、医療ミスを回避するための適切な設計を通してケアギバーにも大きな影響を与えています。」

このようなケアギバーやスタッフに対するポジティブな効果は、おそらく病院がエビデンスベース設計を採用する大きな強みの一つだろう。建築評論 家、ランドスケープ建築家のチャールズ・ジェンクスが2013年のインタビューで語ったように「建築はケアギバーに環境とマインドフレームを与え るが、それは患者に伝わるのだ。だから、建築は重要だ。」

ジェンクスの妻のマギーは1993年に乳がんの宣告を受けていた。マギーはライターであり、またランドスケープ建築家でもあった。彼女は自身の エッセイ「フロントラインからの眺め」の中でこう述べている。たいていの病院の環境は、患者にこう言っています。『あなたの気分なんて大したこと じゃない。あなたには価値がない。私たちがあなたに合わせるのではなく、あなたが私たちに合わせなさい。』と…。でも、ほんの少しの努力と費用で こんなふうにも変わるんです。『ようこそ！心配しないで。私たちはあなたを安心させるためにここにいます。あなたの治療は素晴らしいもので、助け になるでしょう。』と…。患者が病院で過ごす日を待ち望んで何がいけないんでしょうか？」

家のような病院

マギーは晩年の２年間を理想的な癌治療の環境についてのヴィジョンを具体化することに費やした。それは暖かく、歓迎する場所で、患者たちが病気に 取り組むことを学び、友達や家族、また、ヘルスケアの専門家に会う場所だ。マギーは患者が自分の治療について知らされる参加者となり、また、リ ラックスしたり、ヨガをしたり、お茶を作ったり、おしゃべりできる「家庭のようなオアシス」を夢見ていた。

1,996年、彼女が亡くなったおよそ１年後、マギーのヴィジョンは彼女が治療を受けていたスコットランド、エジンバラのウェスタンジェネラル・ ホスピタルの敷地内に最初のマギーセンターとして実現した。今ではマギーセンターは17ヶ所にでき、さらに多くのセンターが計画されている。

「マギーの構想とは、大病院にありがちな人間的でない環境に比べて、暖かく、歓迎的な、家庭のような雰囲気を創ることにありました。」とフィッ シャー博士は語った。そして、個人のスペースにそのような落ち着いた癒しの環境を設えるちょっとした知恵を教えてくれた。

・自然とつながる。戸外や自然が見えることは癒しにとってとても大切。
庭や自然がなければ、プラントや自然の風景を写した写真や自然素材でできたものを飾ることも効果的。
・アートと音楽のちからを借りること
・分厚いカーテンをとって、できるだけたくさん陽の光を取り入れること。
ブラインドやシェードで光を調節する。
・ストレスの一番の原因である騒音をへらす。大都市に住む人には、防音の窓を
取り付けるのもいい。またはクッションの効いたカーペットもいい。
・ソフトカラーのマテリアルを取り入れて瞑想や沈黙のスペースをつくる。

引用元:サイト